「……店の経営、良くないな。良くないというよりまずいだろ、これは」 母さんが店主を務め、俺と紗良が学園に通いながら手伝って経営している 喫茶店の帳簿をめくりながら、ため息をつく父さん。 客が減っている原因は、最近、近くにメイド喫茶ができて、 そっちに客をとられてるからだ。 「つまり、うちの店も対抗してコスプレすればいいってことだ」 こともなげに言い放つ父さんの手には、 コスプレらしき衣装……実にきわどい衣装の数々がつかみ上げられていて、 家族一同の前にバンバンと広げられていく。 「そうねぇ、経営努力のためにはそういう格好するのも仕方ない……わよねぇ……」 母さんは、おっとり天然系で、ある意味物事に動じないタイプだ。 かなり強引で突拍子のないところがある父さんと結婚しているわけだから、 こんなトンデモ提案でもそれなりに受け入れることができるのか。 「あ……だ、ダメ、嫌……無理、ぜ、絶対無理……!!」 顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を振り、紗良は部屋を飛び出していった。 そりゃ、なあ……これ着て店に出ろだなんて、 あいつにとっちゃ罰ゲームどころかOOだ。 「……というわけだ、和希。母さんと紗良、二人をよろしく頼んだぞ」 その後、紗良に続いて父さんも部屋を出ていったから、この日はこれでお開きとなった。 そして翌日から、紗良は以前と同じままながら、 母さんは父さん推薦の新衣装に着替えて、店に出ることとなったのである。
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